こどもの風邪診療
康雲堂医院は、質が高く、費用対効果に優れ、患者さんへの負担が少ない低侵襲の医療を提供する一次診療機関を目指したい。
昔はどこにでもあった町角のお豆腐屋さんのように、いつでも同じものを同じよう提供する、地域になくてはならない診療所。地味だけれど毎日の生活に潤いと安らぎを与えてくれる四角四面のお豆腐のようなお医者さんがいる診療所。それが康雲堂医院が目指す理想の姿だ。
難しい処置や治療は大きな病院や専門医療機関に任せて、見落としのない、安心な医療をめざし、家族一人ひとりの健康の維持と増進に貢献できる、無力ではあっても頼りになるgeneralistのお医者さんであることがクリニックの基本理念である。
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街角にジングルベルの調べが鳴り響く頃、巷は風邪の季節を迎える。
高熱をともなうインフルエンザをはじめ鼻水、のどの痛み、咳、発熱、時には下痢や嘔吐をともなう風邪症候群の急増は冬の年中行事だ。
今は亡き恩師のI教授によれば、こどもは年に5回風邪をひく。風邪は5日間で治る。そう教わった。どこの教科書にも書いていない、奥義のような教えに感心したものだった。
実際に診療に従事してみるとそう単純ではない。おそらくふつうの風邪は五日でピークを過ぎるという経験則からの教えだったのだろう。その意味では当たっている。
風邪は万病のもと。でも生活習慣病の大人や隠れた持病のある高齢者と違って、こどもの感冒症状のほとんどは急性感染症によるものである。その多くが自然治癒する。
この10年間でこどもの風邪症候群の診療は著しく変容した。
なんといっても、乳幼児期の予防接種が普及して入院治療が必要なこじれた重症患者が激減したことと細菌やウイルスなどの感染源に対するなどの迅速診断がどこでもできるようになったことでほとんどの風邪様症状(急性上気道炎症状)の患者は外来診療で対応できるようになったことだ。おかげで不必要な抗生物質や合併症を起こす可能性がある抗炎症剤を使わなくてすむようになった。
迅速診断のない昔はインフルエンザも流行性感冒(略して流感)と呼ばれていた。高熱をともなう風邪が集団発生することでこう呼ばれていた。
一方、免疫力が整っていない乳幼児は風邪症状によって始まる重い病気や重篤な合併症を起こす感染症もないわけではない。見極めと適切な対応が重要だ。
今でも、やっぱり「風邪はあなどれない」のである。
〇外来でできる病原体の迅速診断
・溶連菌
・インフルエンザウイルス
・RSウイルス
・マイコプラズマ抗原
・ヒトメタニューモウイルス
。ロタウイルス(便)
・アデノウイルス(便)
・ノロウイルス(便)
外来でできる迅速検査は保険適用に年齢制限や病態(肺炎疑いなど)が決まっている。それについてはいずれ「こどもの予防接種」とともにまとめて記載したい。
なお、迅速検査ではなく結果が出るまで数日かかる外注検査になるがマイコプラズマLAMP、百日咳菌LAMPは未治療の病初期患者では感度、特異度ともにがきわめてすぐれている。疑った場合には試みてよい検査である。