沈黙の一年

f:id:koundo_clinic_VR:20191120170344p:plain

ただひたすら耐える沈黙の一年が終わろうとしている。

事態は好転したのだろうか?

未知、既知を問わず、感染症に対する切り札は、感染源を死滅あるいは体内で増殖させない抗生物質や化学物質と発症の予防をもたらすワクチンの接種である。

COVID-19ウイルスを死滅させる抗生剤が見つかっていない現在では、予防のためのワクチンだけが残された闘いの武器である。新たにこれまでとは発想のことなるRNAワクチンが短期間に欧米では開発され、これで、この先の見えない闘いも最終ステージに入ったかのように思われた。

国内でも、ようやく医療者に引き続き高齢者へのワクチン接種が始まったが、対象者の100分の1以下の提供量しか配布されず、世の中がざわついている。

医療者向けのワクチン接種も大病院や重点病院ではすでに2回が終わっているところも出始めているが、小さなクリニックにはなんの音沙汰もなく、いつできるのかまったく分からない状態であることをおそらく多くの人は知らないだろう。高齢者を除く一般人にワクチンがいつ接種できるのか今の時点では皆目不明なのが実情なのだ。

COVID-19の第3波が終わり、例年になく早い桜の時期を終えるとほぼ同時、緊急事態宣言が解除されてわずか一ヶ月足らずで、急速な患者の増加による第4波が始まった。従来株に加えて変異株の流行で、これからがこの疫病の本格的な局面を迎えることになる。息つく暇も無い展開とはまさにこのことだ。

かつてはワクチン先進国であったこの国も、いつの間にか時代遅れの浦島太郎になってしまった。自国民を守るための最低限の薬剤を提供する技術もない医療後進国に堕落してしまった姿があからさまになり、この国がリスクマネジメントのできない国であることを世界中に示すことになった。医療先進国とは名ばかりで、国の施策も薬剤業界も医学界も危険に備える姿勢がないことを如実に示す、寂しい実力が示されてしまった。

大阪、兵庫などの西日本や宮城では加速度的に患者が増加し、さらに2日前からは東京、京都、沖縄にも新たに「まん延防止等重点措置」の適用が決定された。

肝心要の武器であるワクチン接種供給の先行きが見えず、多くの国民は長引く自制と自粛で、さらにこの先のあてどのない暮らしに不安と困惑するだけの状態になっている。すでにあきらめの空気の流れはじめ、忍耐の糸が切れてしまった人々が街中に溢れるようになったしまったのは、ある意味、当然かもしれない。家にこもって息を潜めているのにも限界がある。

生きるためには屋外での生活が必要だ。山積みにしたままの仕事もしなければならない。

そんななかでオリンピックを強硬開催するという。無理なものは無理、猫の首に鈴を付ける勇気もない。

まさに狂気の沙汰という以外にない。オリンピック開催までもうあと100日と迫っている。

するべきことはオリンピックなどではなく、国民の命と健康を守ることである。