COVID-19_院内感染をどう防ぐ


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世界では感染者数が200万人を越えた。

わが国では瀬戸際での戦いが続いている。緊急事態宣言による外出の自粛と三密を防ぐための国民への呼びかけによって感染爆発(オーバーシュート)はなんとか逃れてはいる。都市封鎖や交通機関の停止を行わずに自覚による自粛の呼びかけはいちおう効果があるようだ。

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緊急事態宣言(4月8日)

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昨日には緊急事態宣言が7都府県に限らず全国に広げられた。さまざま批判はあるにしろ今できることを行ったことは評価してよい。

目に見えぬ疫災に対して政府は率直に言ってよくやっていると思う。愚直と批判される「布マスク」配布も決して愚策とは思えない。

ただ今回の対応で本質的な誤りがあることを指摘したい。

わが国では診断のためのPCR検査(RT-PCR)を制限している。この点は明らかな誤りである。軽症の有症状患者や不安に駆られた市民が検査を求めて殺到することが危惧され、肝心な必要とされる患者の検査ができなくなることが予想されるので検査は一定の基準を満たさない場合には対象外としたことである。しかもその振り分けを医療者ではない行政担当者が行っていることはあきらかな誤りだ。

今するべきこと、速やかに取り組むべきことは、手技が煩雑で手数の多いこのPCR検査体制の拡充と整備ならびに医療従事者の確保である。

パンデミックにともない患者が増大しだした初期には確かに思わぬ出来事に右往左往することは仕方がない。クルーズ船プリンセスダイアモンドでの発生によりこの感染症が恐ろしい破壊力を持つことが認識された時点で、いちはやく検出のための体制整備をすすめるべきだった。

国内での患者が9千人を越えなんとかオーバーシュートの手前で収まってはいるものの、おそらくこの災難はしばらく続くと予想せざるを得ない。

後方視的批判は意味がない。これからが本当の正念場だ。

軽症者をいち早く発見し隔離し、重症者に十分な医療が提供されるように体制を強化することが今すぐに取り組むべき方策である。

これからでも遅くはない。民間機関や研究機関の協力を得て、国民の総力をあげてPCR検査に対応できる施設を整備するべきである。研究所の研究者や助手などの高度の技術を持つ技能者に協力を要請し、国内での調達が困難であるのならば、国外に協力を要請してでも検査体制を拡充するべきである。

疾患と闘うには、先手必勝が原則である。症状の有無にかかわらず一般市民の三密防止や外出自主も重要だが、なによりも軽症者を可能なかぎり早期に検出して施設や自宅に隔離することが二次感染を防ぐもっとも有効な手段である。この点で、早期診断の機会を放棄したこれまでの施策は誤りである。

もうひとつの取るべき施策は院内感染の防止と医療従事者の感染からの保護である。患者が増え続け、対応する医療者が憔悴すれば医療は崩壊せざるを得ない。

院内感染防止のための防護具や薬剤を病院に集中させ、手厚い保護器具の装着のうえ医療に臨めるように体制を整備しなければならない。定年後の退職医師や自宅にいる医療現場を離れている看護師を総動員して、コロナ感染症以外の医療支援に当てる方策を実施し、医療の疲弊を最小限に食い止めることが必要だ。そのためには十分な院内感染制御体制の構築が必要である。活力のある働き盛りの医療者には凶悪なこの感染症との闘いの最前線で奮闘してもらい、それ以外の通常の医療に対する後方支援体制を固めて医療の枯渇に備えるべきである。

いつまで続くか不明なこの戦いが一日も早く昔話になってくれることを願いたいが、知恵を絞って今できることをできるようにするべきである。目の前の困難に悩殺されて、少しだけ先のことすら見えなくなるようなことがないように心から願う。