マイコプラズマの家族内感染
身近にマイコプラズマの家族内感染を経験したので復習しておく。
・マイコプラズマは小さな病原体で、細菌に分類されるが細胞膜がなく、ウイルスと細菌の中間に属するような性質をもつ。
・飛沫感染あるいは接触感染で感染力は強く、しばしば濃厚接触のある家族内で蔓延する。
・マイコプラズマ感染は自然治癒するが、時に重症化することがある。
・肺炎(下気道感染)、髄膜炎、心筋炎、胸膜線、ギランバレー症候群、多形滲出性紅斑の原因となる。
・潜伏期は1~4週間。
・上気道炎症状で発症し、発熱が3日(72時間)以上続く場合にはマイコプラズマ感染を疑う。
・迅速診断(マイコプラズマ抗原)があるが、感度は高くない(最近のキットは改善しているという)。
・確定診断は血清診断であるが、マイコプラズマLAMP(遺伝子診断)は数日で結果がでるのでよい。
・4歳以上で、咳と発熱が続くが全身状態は比較的良好で、胸部聴診所見でcrackleを聴取せず、X線で肺炎があれば、マイコプラズマ肺炎を疑う。
・感染源は家族内感染が多い(40%の報告あり)
・マイコプラズマLAMPが陰性ならば、クラミドフィラ・ニューモニエ感染を考える(血清抗体測定)。
第一選択:アジスロマイシン(ジスロマック) 10㎎/kg/日 1日1回・3日(成人400~500㎎/日)
あるいは、クラリスロマイシン(クラリス) 10~15㎎/日 分2~3・10日(成人400㎎~800㎎/日)
第二選択:第一選択薬で48時間以上発熱が続く場合
・8歳以上 ミノサイクリン(ミノマイシン) 4㎎/kg/日 分2・7日(成人200㎎/日)
・8歳未満 トスフロキサシン(オゼックス) 12㎎/kg/日 分2・7日
トスフロキサシンはニューキノロン系、クラリスやエリスロシンの細粒には独特の苦みがあるので、錠剤が飲めない年少児では第一選択でもよいか(明治はイチゴ味だそう)。成人300~600㎎/日)
上記に加えて、L-カルボシステイン(ムコダイン)30㎎/kg/日 分3、アンブロキソール(ムコソルバン)0.9㎎/kg/日 分3を処方。喘鳴あればツロプテロール(ホクナリン)テープ追加。
付記 マクロライドへの耐性菌が多い(15~80%超らしい)。8歳以上で発熱が続いていれば最初からミノマイシンでいいかもしれない。細胞膜がない構造上、ミノマイシンへの耐性は獲得できない。